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……ああ、危ないところだった。
いろいろ嗅ぎ回られていたのには、気がついていた。
でも、どうやらようやく、諦めてくれたらしい。
ひた隠しにしている自分の『裏の顔』には、たどり着くことはなかったようだ。
うん、これで一安心だ。
世間には、バレるわけにはいかない。
新時代の実業家・甘峰夏樹には、不要な、余計な部分は、なくていい。
そう、何としても、隠し通さなくてはならないのだ――
稼いだお金のほとんどを、恵まれない子供たちのために寄付している、なんていう事実は。
寄付というのは、人知れず行うからこそ、輝く行為だ。
「甘峰夏樹が寄付をした」なんて世間にバレたら、そんな格好悪いことはない。
絶対に、秘密のまましておかなくては。
これからも、ひたすら善良な人物を、クリーンなCEOを、自分は演じ続けなければならない。
いずれ、もっともっと正当な手段でお金を稼いで、子供に限らず、難病支援のため、地球環境のため、平和のため、もっともっといろいろなところへ寄付できるようになって。
そして、世界中の人々を幸せにする――その日が来るまでは。
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