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実可子の本業は女優である。
女優といっても舞台女優でつい最近、劇団の研究生から劇団員に昇格したばかりの駆け出しなのだ。
駆け出しといっても、絶賛厄年ど真ん中の31歳で若いとも言えない。
学生時代は、美人で通っていた。
田舎での話だ。
演劇部で脚本も手がけ、主演もしていた為、将来は女優になれるよなんて言われてその気になって劇団の門を叩いたのだ。
でも、若気の至りでそんなに甘い世界では無かった。
それでも演じるのは、純粋に好きだったので、頑張って続けていたのだった。
ただ、研究生から劇団員に昇格したからと言って手放しでは喜べない。
それは公演のチケットのノルマが発生することを意味したからだ。
これがなんとも辛いのだ。
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