緞帳を下ろしたのは

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◇ 「オークス、最期に聴いてほしい歌があるわ」 「最期になんてならない。君はまだ生きてみんなに歌を届けるんだ」 「いえ、これが最期よ」  大粒の雨が2人を濡らす。  モナルダにかけられた呪いによって、それは嵐へと一変する。 「……聴かせてくれ。君の思いを。その歌を」  彼女の歌は、いつも国の人々を幸せにしてきた。  なのに、自身にかけられた呪いでこの国が不幸になる前にと、自ら命を絶つことを選んだ。  モナルダは全身に回っていく毒に苦しみながら、豪雨の音に負けない高らかな声で愛を歌う。  だが意識が遠のくごとに雨が弱まっていく様子に安堵し、ついには膝から崩れ落ちる。  オークスは慌ててモナルダを受け止めるが、その身体の冷たさにやっと彼女の松明の火が消えかかっていることを実感する。  少しでもこの火を永らえさせようと、抱き締める腕に力が入る。 「オークス、……あの日、私の心に火をつけてくれて、ありがとう」 「モナルダ、僕に愛を教えてくれて、ありがとう」  モナルダから向けられる視線がたまらなく熱い。  消えていく恋人。  最期の会話。
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