緞帳を下ろしたのは

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 自分を捨てて、なるべき役になる。何年もやってきたことが、なぜ普通にできない? 「とりあえず、キスはなしだ。いいな?」 「え、なんで?」   「なんでって……」  篤志は珍しく食い下がる。  キスをするのは俺と篤志じゃない。モナルダとオークスだ。頭ではわかっているのに、俺の自由な世界の輪郭が段々とぼやけ始める。 「観客はそんなの求めてないだろ」 「でも、()()()()()理由としては十分じゃないか? オークスはモナルダに愛を伝えたいって……」 「キスなんてしなくても十分伝わる。必要ないことはしない」  この舞台を乗り越えれば、俺はまた自由な世界で生きていける。それまでの辛抱だ。
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