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**  早川と橋下が事務所に戻ってそう時間が経たないうちに外で車が停まる音がした。玄関が開き、やっぱりガチャガチャと喧しい音がした。 「すんません! 遅くなりました」菅原がそう言って部屋の扉を勢いよく開けた。その後ろを悠然と副島がついて来ていた。 「えっとお、なんか大変なことになっててですね」菅原は急いで入って来た勢いのまま報告を始めた。 「そんなに慌てないでまずは一杯飲めや。橋下、ビールでも出してやれ」早川はそう優雅に言った。そして「高田は〈東会〉とでも関係があったか?」と言ってニヤリと笑った。菅原は目を丸くしていた。 「高田は茨城の出身らしくて、大学行った後から相模原に来たみたいっす。確かに相模原の半グレ集団に所属していた時期は短かったみたいっす」 「菅原くんの友人が運よく相模原の高田の所属していた集団の幹部になっていましてね」副島が付け加えた。 「なんかフラッとやってきて、いつの間にか仲間になってたみたいっす。仕事も出来るし、愛想もいいからすぐに馴染んだみてえだったんすけど。そのうちヤクザに情報を流してるんじゃないかって噂が出て、その集団から追い出されたみたいっす」 「噂が出てすぐに追い出したってのか?」 「トラブルメーカーみたいだったみたいですよ。あちこちに行って、その場にいない人間がああ言ってたとかこう言ってたとか話をして、お互いを疑心暗鬼にさせるようなことをやってたようです」 「なんだそりゃ」副島の言葉に早川は呆れたような声をあげた。 「それもあってすぐに追い出したって言ってたっす。えっと、それから大学は東京聖和大学ってとこです。東京ってついてますけど、大学は埼玉にあるって。そこを中退して茨城に戻って来たようっす」 「戻って来た頃に〈東会〉と知り合ったようなんですけど、それは茨城に行ってみないと完璧な裏は取れそうもないですね」副島はそう付け加えた。 「大学はなんで辞めたんだ? 〈東会〉絡みか?」 「いや、当時からSNSで知り合いだった奴に聞いたら、そん時はなんかうまく学校に馴染めなかっただけみたいっすね。ヤクザのヤの字も聞いたことないって言ってました。なんだか家から出なかったみたいっす」  早川は少しの間、思案していた。高田が他の組と絡みがあるのは理解した。だがそれが〈東会〉という決め手に欠けた。  すると菅原が急にスマホをいじり始めた。 「──〈エレナ〉ってこの女っすか?」  早川と橋下が覗き込んだ。「ああ、この女だが?」 「このアカウントって表向きは一般人ってことになってますけど〈東会〉の幹部のアカウントです。そこに『俺のオンナ』って書いてるっす」  菅原はスクロールしてそのページを開いた。そこには仲睦まじい二人の写真が何枚もあった。 「それから高田が半グレ時代に得意としていたのがだそうっす」  早川と橋下は顔を見合わせた。
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