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「橋下さーん! お疲れさまっすー」菅原が息を切らせて走って帰って来た。 「おう」その声に橋下は朝顔を見つめていた顔を上げた。 「朝顔に水やりっすか?」 「まあな。用事はもう済んだのか?」橋下がそう聞くと、菅原は元気よく返事をした。 「そういや副島さんが菅原のことを褒めてたぞ」  橋下がそう言うと、菅原が分かりやすく照れた。 「それにだいぶ〈SPY×FAMILY〉も気に入ったみたいじゃないか。さっきもキーホルダーを自慢されたぞ」 「副島さんがアーニャが大倉の兄貴の兄弟みたいで可愛いって言ってたンで。あのアクキーって限定品で超レアなんすよ。手に入れるのにすげえ苦労したんす。転売屋から買うのってなんかムカつくじゃないですか。だから友達の友達の彼女の友達の従姉妹の婆ちゃんがたまたま持ってたんで、頼みこんで貰って来ました!」 「副島さんはそれを知ってる……?」 「はいッ! 超レアなのも苦労して手に入れたのも全部報告しました!」  なんか嫌な予感がする。橋下は朝顔の鉢を置きっぱなしにして、慌てて事務所に入って行った。  案の定、副島は早川に向かってキーホルダーの自慢をしていた。早川はにこやかに聞きつつも、内心イライラしてるようだった。そういう時は足先の貧乏ゆすりが止まらないのだ。 「ほー。菅原が」 「ええ。私のために手に入れてくれました」  副島……余計なことを。橋下の眉間に自然に皺が寄った。 「俺にはなんもねえよなあ、菅原! すげえ頑張った俺にはなんで何もねえンだ?」 「は!?」菅原は驚いて声をあげた。 「いや、若頭は〈SPY×FAMILY〉とか好きじゃねえって思って」 「勧められれば、そりゃ読むだろうが!」  早川はそう言って拗ねてしまった。うん、面倒くさいぞ。 「橋下さん、若頭にも勧めたほうが良かったっすか?」菅原が小声で聞いてきた。 「いや、どうだろうな」  どうでもいいが、胃が痛い。
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