episode 2 名古屋へGO 3

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「副島さん、なんか嬉しそうに運転してるっすねえ」運転している菅原は副島の後ろをついていきながらそう言った。 「副島さんてアルファードあんま好きじゃないんですか?」立石が橋下に尋ねた。 「アルファードがどうのっていうより、単純に初めて乗る車だからじゃねえか」 「いつも副島さんは日産車でしたっけ」 「まあ、そうだな」  突然菅原が「うおっ」っと声を上げた。「副島さん、いきなりスピード上げないで欲しいンすよねえ。信号があるっての」 「ホテルの場所は知ってるんだろ? だったら好きにさせとけ」  そう答えた橋下を立石はじっと眺めた。 「な、何だ?」 「そんなこと言うから一緒に乗ってけって言われるんですよ」 「うるせえ」 「若頭から『二台で行ったら絶対バラバラに到着するからな。橋下はそんなことないって言ってたが、信用できないから頼む』って言われましたもん」  余計なことを。だがそんなところまで見抜かれていたと思うとバツが悪かった。「出来るだけ離れないようにしろ」と言うしかなかった。  菅原に予約を任せたホテルはお手頃値段のビジネスホテルだった。フロントのは中年の男性がいた。菅原が名乗るとすぐに対応してくれた。 「ツイン二部屋でご予約の菅原様ですね」  ツイン二部屋? 橋下はすぐに菅原の顔を見た。だが菅原は「そうっす」とにこやかに答えていた。 「菅原。二部屋じゃ足りねえだろ」 「ああ、だから一つの部屋にはベッド入れてもらうっす」 「は?」 「ええ、ご予約の際にエキストラベッドご利用と承っておりますので。ご用意しております」フロントの男性は愛想良くそう答えた。 「馬鹿野郎! そういう時は副島さんは一人部屋に決まってンだろうがッ!」橋下はそう言って菅原の尻を蹴った。 「え? でも経費削減って言ってたじゃないすかあ。だからエキストラベッドを入れられるホテルにしたンすよお」菅原は尻を押さえながら不満げに答えた。 「経費削減っつたって、そういうとこはちゃんとしろや!」 「私は二人一緒で構いませんよ。橋下さえよければ」副島は何を揉めてるんだと首を傾げていた。そんなことより早くしろといった感じだ。  橋下は渋々「じゃあ、それでいい」と答えるしかなかった。ここでごり押しすれば、自分が副島との相部屋を嫌がっているように思われてしまう。 「ツインにエキストラベッドを入れた方が、シングルを別にお取りするより少しお安いですし」フロントの男性は菅原をフォローするように言った。「今はどの会社様でも経費削減はうるさいですから」 「そうですねえ」副島はにこりと笑って答えた。
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