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気がつくと朝になっていた。確か副島が部屋に戻って来た時に一度目を覚ました記憶があったが、そのまままた眠ってしまったようだった。
副島はすっかり身支度を整えて、備え付けの小さな机で優雅にパソコンをやっていた。
「おはようございます」橋下はそう言って頭を下げた。「早いっすね」
「あまり眠らなくても支障がないので」副島は一瞬顔を上げたが、すぐにパソコンに見入っていた。橋下は煙草を吸おうと思って禁煙ルームだったことを思い出す。急いで用意して煙草を吸いに行こう。そう思って重い身体を引き摺ってバスルームに向かった。
「おはようございます」三人は先にフロントに着いていた。橋下がフロントで会計をしてると、後ろで「モーニングはどこに行きます?」と盛り上がっていた。確か名古屋のモーニングは充実してたんだったなと思い出した。今日は昼飯はどうせコンビニ飯だろうし、夜は何時に飯が食えるかすら謎だ。朝だけはゆっくり食べたほうがいいだろうなと橋下はぼんやり思った。
コーヒーの美味しい店で。副島のそのひと言で店が決まった。名古屋には老舗の喫茶店が多いのも助かる。今日の作戦の再確認をしておきたかった。四人掛けの席に無理やり椅子を置かせてもらった。菅原は「お誕生日席だ」と喜んでいたが。三人は甘い餡バターのトーストを注文していた。見ているほうが胸焼けしそうだった。
副島はモーニングを注文したもののコーヒーばかり飲んでいる。どうやら朝はコーヒーを飲まないと駄目なタイプらしい。
「──今日の確認するぞ」橋下は食べながらだったが、話を始めた。「二手に分かれるのは予定通りだ。ヤリスのほうには立石と菅原が乗って」
「ああ、それなんですけどねえ。大倉と立石にしたほうがいいと思いますよ」
ヤリスのほうは〈鳴門組〉が出入りする事務所の前で張る予定になっていた。〈鳴門組〉の根城は事前に掴んでいた。恐らくそこから取引き場所に向かうはずだ。それを見届けるのがヤリスの役目だ。たいしてアルファードのほうは取引き現場近くで待つ。〈中京連合〉がどういう動きをするのかを見張る役目だった。
「ただ護衛をするみたいなものだ。それに大倉を使いますか?」
「だといいんですがねえ」副島は窓の外を眺めながらそう言った。確かにあの廃ビルで大人しく取引きに応じるとは橋下にも思えなかった。橋下は廃ビルに何か仕込ませるのではないかと考えていたが、副島はどうやらそうではないらしい。そう考えるならできるだけ両方の戦力を均等にしておく必要がある。相手がどんな手でくるか想定しにくい以上は副島の考えのほうが効率的だといえる。橋下は副島の案に乗ることに決めた。
「じゃあヤリスのほうは大倉と立石で頼む」
橋下がそう言うと、二人は手を止めて頷いた。
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