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「橋下さんは昼飯どうしますか?」
ガタガタしていたせいでだいぶ遅い昼飯になってしまった。だが橋下は食欲はあまり感じなかった。胃も痛い気がする。
「もしかして何も食ってねえのに薬飲んだから胃が痛えとかですか?」
そう言われればそうなのかもしれない。コンビニに行くという菅原に、カネを渡して何かあまり重くないもので適当に買ってきてくれと頼んだ。
橋下は高田の件がずっと頭から離れなかった。高田と立石は恐らくあまり仲がよくないのだろう。仲がよかったら直接立石にキャバクラを紹介してるだろう。確かに上を小馬鹿にしたような態度の高田は立石からしたらだいぶ可愛くない。菅原の話だと野本はだいぶ立石寄りだ。野本を使って立石を嵌めた。だが何のために? 気に入らないからってそこまでやるか?
バタバタと音がした。菅原が帰って来た。相変わらず喧しい奴だ。
「ラーメンでいいっすか?」
「あ、ああ」正直どうも胃のあたりが重いのでラーメンはキツいと思ったのだが、最初から伝えておかなかった自分が悪い。
菅原はケトルで湯を沸かし、袋から取り出したものを電子レンジに入れた。そしてシンク下の棚からどんぶりを取り出した。橋下は何をしてるのかと、くるくると動く菅原の背中を見つめた。カップラーメンか温めるだけのラーメンかと思ったのだが。
「出来ましたー! どうっすか?」
目の前に置かれたのはあっさりとした見た目の昔ながらの中華そばだった。
「冷凍の醤油ラーメンっす。結構あっさりめでうまいし、あんま食えない時とかおすすめなんす」
なるほど。それで忙しそうにしていたというわけか。橋下はひと口食べてみた。思いのほか美味しくて、しかも懐かしい味がした。
「美味いな。あっさりしてるわりにコクがある」
「でしょ!」菅原は嬉しそうに照れた。
菅原は袋からゴソゴソと何かを取り出した。他に何か買ってきたのだろう。確かに菅原はこれだけじゃ足りないだろうなと橋下は思った。
「うん? なんだ、そりゃ?」
「おはぎっす。売ってたんで」
「好きなのか?」
「はいッ!」菅原は元気よく返事をした。まあ、スイーツ代わりといえばそうなんだろう。だが菅原はそのまま開けて、ラーメンの隣に並べた。
「まさかとは思うがラーメンと一緒に食うのか?」
「え? まさかってなんすか? 一緒に食うからきな粉と胡麻にしたんすけど」
一緒に食うからきな粉と胡麻にしたって何だ? それだとラーメンと一緒に食ってもいいのか?
橋下が不思議に思ってると、菅原はラーメンを食べきな粉のおはぎに齧りついた。
「美味いのか? それ」
「胡麻食ってみます?」菅原は差し出した。橋下は半分でいいと言った。菅原が半分にして寄越したので、橋下はひと口食べてみる。ほんのり甘くてこれはこれで美味しい。だがラーメンとは間違いなく合わない。
「食わないンすか?」
「ラーメン食い終わってから食うわ」
「えー、一緒に食べるのが美味しいのに」いや。間違いなくそれには同意しかねる。
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