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黄水晶。黄玉。ルチル水晶。
ライグが講義に使った鉱物を木箱に片付けていると、窓下が騒がしくなった。
薬草学教授のダミ声が、四月の暖かな風に乗って彼のいる二階の教室へと流れ込んでくる。
彼はしばらく視線を宙に浮かせたあと、教卓から離れて窓辺に立った。半分開いた片開き窓から、窓枠に隠れるようにして中庭を見下ろす。
ヒヤシンスやブルーベルに彩られた花壇を避けつつ、二十人程の学生が教授を取り囲んでいる。その輪から、ライグは一人の顔を探した。ひと月、彼の講義を欠席している学生。
「……午後の実習は学校林での予定だったが、はぐれ猪がうろついているらしい。そこで行き先を……」
教授の言葉に「猪ぃ?」「どこから……」と学生たちがざわめいた。そのさざなみの終端、輪の後ろの方に彼女はいた。
ノートを胸に抱え、空を見上げている。ゆるくひとつに結わえた黒髪を撫でる、その風の出所を探すように。
彼女が薬草学には出席していることにほっとして、ライグもつられるように霞の空を見上げた。
「キリアン・コーダー! 遅刻だぞ!」
怒鳴る声に、ライグも彼女も顔を下げた。すらりとした男子学生が「すいません」と言いながら彼女の横に並び、何か言った。彼女が肩をすくめる。
胸をすうっと伝った冷たさと、彼女を覗き見ていたやましさに、彼は中庭から顔を背けた。
不意に背後から声がした。「ライグ先生」
「うああああ」
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