妖精と躍る

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 呪術師はふんと鼻を鳴らした。 「まあ、いい。では最後に一つ。これが終わったら本に戻る」呪術師はライグに向けて杖を左右に振った。「今からカードを二枚ずつ五回、お前に見せる。カードには、文字がびっしり書いてある。直感で好きな方を選べ」  呪術師がやっと「帰宅」しそうな雰囲気に、ライグはほっとした。 「いいですけど。何かの試験ですか?」 「いいから。ほれ、一組目」  細かな文字が書かれた手のひら大の紙が二枚、宙にヒラヒラ浮かんだ。 「両方、同じに見えますけど」 「早く選べ。直感でビビッと選べ」 「じゃあ、右」 「ほれ。次」  一組目が宙から消え、新しい二枚が現れた。 「うーん。左」  ライグが五枚の紙を選び終わると、呪術師が言った。 「では、黒板に書け。『自分が思っている以上に、自分は知っている』と」 「知っている……と。書きました」  チョークを置いて、ライグは「終わりですね?」と呪術師に向かって微笑んだ。呪術師は彼を鋭い目で見上げた。 「では、お前が『知っている』ことを教えよう。今の紙、片方にはある共通の文字列を紛れ込ませてあった。それが含まれている方をお前は無意識に、だが正確に選び取った」 「何ていう文字です?」  呪術師はニッと笑った。 「ベリンダ・クロス」  そう言うやいなや大呪術師ディアドラはシュッと一回転し、霧となって散った。
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