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一房目〆いつから僕たちは 夕紫side
青和高校 特進クラス2年A組 出席番号36
吉成 夕紫。
僕の名前は入学時から知られていた。主席で合格し入学式で新入生代表を読み上げた。
中間テスト、期末テストも成績も常にトップで張り出される成績表を見て"またあいつ"と指をさされるのも慣れた。
だけど名前が知られているのはその理由だけじゃない。
「吉成くん、これ榊くんに渡してもらえないかな?」
渡り廊下で隣のクラスの女子生徒に渡された手紙はいわゆるラブレターというやつだ。もう数え切れないくらいこの状況を経験している僕は何の躊躇もなく手を出して受け取った。
『いいよ渡しとく』
今時ラブレターなんて書く古風な女子もいるんだなと思ったが、相手がたまにしか学校にいなくて連絡先を誰かにも教えたがらない相手ならそれも仕方ないか。
ひらひらとスカートを揺らして去った女子生徒はキャキャと後ろにいた友達二人と教室に戻って行った。
女子からすればポスト代わりと言う訳だ。悪いけどもうポストは満杯状態。そんな手紙のお届け先だが自宅から歩いて、わずか3メートルの場所にある。
『仕方ない。今日持っていくか』
放課後校庭で野球部やサッカー部の部員たちが汗を流し青春を感じている横を素通りし、橙色した夕焼け空を見上げていつもの決まった道を歩き出した。
木枯らしが吹く11月下旬、期末テストが近づき少しでも時間を無駄にしたくない時期。本当は帰ってすぐにでも勉強したいところ今日は少し寄り道を。
ちょうど小学生の高学年だろうか、仲良さそうに歩くランドセルを背負った少年2人が前を歩いている。長い木の枝を右手でブンブン振り回してランドセルや傷や傷み具合でヤンチャ感が分かる子。その左側で迷惑そうな顔で距離を置いたメガネの子。
会話はヤンチャ少年の一方通行でメガネ少年は聞いているのかも分からないくらい静かだ。だけど不穏な空気があるわけでもなく、きっと一緒にいるのが当たり前の関係なんだろう。
そう、いつかの僕らを見ている様で目を背けたくなってそそくさと少年達を追い抜いた。
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