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拍子抜けしたと思ったのは、店の内装が思いの外地味だったこと。よく行くチェーン店とさほど雰囲気が変わらなかったのだ。茶色のテーブル、茶色の壁、たまーに花の絵っぽいのが飾られている普通のレストラン。お店のウェイターに案内されてざっと店内を見たところ、そこそこ人で混み合っている様子だった。
日曜日というのも大きいのだろう。親子連れ、OL、それから商談しているっぽいビジネスマン二人組。自分達が案内された席は、ビジネスマン二人のすぐ隣の席だった。
「いやあ、うちの女房も煩くて。あの感染症、あたし達にもふつーに感染しますから」
ビジネスマン二人のうち、でっぷり太った男性の声が大きい。コロナ禍でよくそんな大声で話せるな、とちらりと振り返ってしまう僕。マスクをつけて喋っているだけまだマシだが。
「それでずーっと外食禁止。あたしだけじゃなくて親戚中みーんな禁止で。そりゃ腹ペコにもなりますよねえ」
「腹ペコって、奥さんも料理してくれるでしょう?」
「してくれるけど、うちのやつなんか駄目ですよ、レトルトしか作れやしない。って、今の御時世こんなこと言ったら怒られちゃいますか。料理できないのはあたしと一緒ですし。キョエルさんは料理できます?」
「私ですか?ものすごく簡単なものくらいですけど……」
キョエル、というのは若くて細身のビジネスマンの名字なのだろうか。変わった名前だなあ、なんて月並な感想を抱く。僕が後ろを気にしていることに気づいたのか、兄が苦笑いをした。
「あんまジロジロ見ないでやれよ。外食解禁されてテンション上がってんのは大人も同じなんだ、きっと」
「そうかもね。大人はお酒も飲むしね」
「そうそう」
レストランのメニューは充実していて、しかもありがたいことにお手軽な値段ばかりだった。高いステーキでさえ千円ちょっと。これなら兄のお小遣いでも十分だろう。
僕はチーズハンバーグ、兄はミートスパゲティを頼んだ。どちらも値段の割に美味しく、そのままのテンションで“デザートも頼もうか”なんて話になったのだった。
楽しい食事だったのだ――この時までは。
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