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オスカル×エリオット編
突然妙な部屋に入り込み脱出不可能となってしまったオスカルとエリオットは、唯一の方法らしいことを早急に試す事となった。
だが、それはエリオットが思っていたものとは全く違っていた。
「……流石に十本は辛いな」
そう呟いたオスカルの顔は明らかに上気し、僅かだが震えている。それをただ見せられているエリオットは胸が痛い思いだった。
媚薬十本。そんな無茶な数をオスカルは全部自分が飲むと言ってきかず、エリオットに下がるよう厳命してしまった。
別に枷があるわけでもない。止めようと思えば止められる。けれどその度にオスカルは必死の目でエリオットを制し、「大丈夫だから」と言う。その意志を、無下に出来ずにいる。
「オスカル、やっぱり私も!」
「それはダメ」
「どうして……」
夫婦なら、困難は二人で乗り越えるものではないのか? そんなに自分は不甲斐ないのか。そんな思いがこみ上げて手を握ってしまう。
そんなエリオットを見て、オスカルが笑った。
「ごめんね、悲しい顔をしないで。ただ、僕が嫌なんだ。こんな変な物を君に飲ませるのも、それで君が乱れるのも。これは僕の我が儘だから」
そんな風に言う人が少し憎らしい。それはエリオットだって同じなんだから。
「それにしても甘いな、これ。飲めるとか飲めないとかじゃなくて、胸焼けする」
そう言いながら、オスカルは十本目の媚薬を一気に飲み干した。途端、部屋は見慣れた自室へと戻る。そして、ガクンとオスカルの膝が抜けた。
「オスカル!」
近づいて触れようとしたエリオットを、オスカルは制した。
「大丈夫、少し気が抜けただけ」
「そんな……直ぐに医務室に!」
「大丈夫だよ。でも今日は心配だから、僕は執務室で寝るよ」
大丈夫なはずがない。顔は上気しているし、指先は震えている。額からは汗が滲んでいる。
それでもオスカルは何でもないように立ち上がった。近衛府団長として、人前で情けない姿は晒さない。それが身に染みている彼の、これは強がりだ。
でも、それを許せるはずがない。エリオットはオスカルの体を捕まえるとそのままベッドへと担ぎ、ドサリと下ろした。
「エリオット?」
明らかに焦った様子なのに声は平常を保っている。それが余計に気にくわない。
上着をひん剥き、ネクタイを取り、下着ごとスラックスを脱がせた。意識のない患者の処置もする、看護もするのだ。万全の状態のかれならいざ知らず、今はいとも容易い事だった。
「エリオット待って!」
「待ちません! 私は怒っているんです! 貴方にも、私自身にも」
オスカルのそこはやはりしっかりと反応していた。隠し通そうとしていたようだけれど、そんなのは無理だ。
座らせた彼の足の間に跪いたエリオットは、そのままオスカルの昂ぶりに手を添えて先端を咥えた。
「んぅ!」
ビクリと腰が逃げそうな程気持ち良いのだろう。当然だとも言えるが。
「ま……て! エリオット今はダメだから!」
「ダメじゃないでしょ」
「だって」
「私達は、夫婦じゃないんですか?」
少し強く出た声に、オスカルはビクリと震える。その顔を、エリオットはジッと見つめた。
「二人でこの先を乗り越えていこうと誓った仲ではないのですか」
「いや、でも」
「……私だって、貴方一人が全てを負うのは嫌です。いつまで私は庇われるのですか? 貴方の負担なのですか?」
「エリオットは僕の負担なんかじゃ!」
「それなら、一緒にさせてください。貴方一人で負わないで。私にも、させてください」
それが、悲しかったんだ。この人の負担では、いたくないんだ。
離してしまった唇で、愛しく昂ぶりの先端にキスをする。トロトロと溢れ出る先走りを舐め取り、口内に収めて吸い付く。喉奥まで飲み込むのはまだ少し苦しいけれど、それが気持ちいいのも伝わる。口の中で育つそれを、エリオットは丁寧に絶頂へと促した。
「エリオット……っ、離して」
絶対に嫌だ。
苦しいのを承知で喉の奥まで押し込み、吸い上げる。瞬間、オスカルは耐えきれず陥落した。直接流し込まれた精液が落ちて絡む。多少咽せながらも、エリオットは全て飲み下した。
「ごめん……」
「謝らないでください」
申し訳なさそうな顔をするオスカルに手を伸ばすと、彼は笑う。熱い手が頬に触れて、キスをされて。
「エリオット、もう無理、限界。君が欲しい」
「えぇ、オスカル。素直な貴方は可愛いですね」
「かっこいいがいいな」
「それはいつもですから」
エリオットもベッドに乗り上げ、互いに深くキスをして。
穏やかで、でも濃厚な夜はその後も続くのだった。
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