からっぽの私

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とりあえず挨拶はしなきゃ。 「……初めまして。私この店の長女の真琴です。今回色々あって家に戻って来まして。アルバイトさんでしょうか?よろしくお願いします」 ペコリと頭を下げた。 「……」 ん?反応なし?様子を伺うと彼は隠す事もなく顔をしかめた。 「ああ。どうも」 そしてそれだけ言うと店内に戻ろうとする。 「いや、ちょっと待って下さい。こちらが挨拶したのだから貴方も応えるのが礼儀でしょう」 父母はどちらも礼儀作法に厳しいから指導はされているものだと思ったけど。 彼はキッと私を睨み付けた。美人が睨むと迫力ある……。 「何年も家に帰らず、ろくに連絡も寄越さず、仕事を辞めたからと言って実家に甘える方にそんな事を言われたくありません」 「は」 「俺は遠野秋桜(とおのあきお)、ここで和菓子職人として働かせてもらってます」 ピシャーンと雷が落ちたようだ。 腹が立つけど彼が言った事は間違ってない。それが私に対する世間一般の評価だ。 「「……」」 何とも気まずい空気が流れる。何か言い返す気力も出ない。 「おい秋桜、何やってんだ。さっさと中に戻れ」 「!あ、すみません」 表の空気を察したのか父が暖簾からひょっこり顔を出した。
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