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みよ婆
みよ婆から青山准一に電話がきた。
電話の内容は大方検討がついていた。
みよ婆の家は代々、結界士をやっている。
「また結界の中に妙な物を入れたね。
外側から力づくで結界を破壊しようとしているモノがいる。」
みよ婆はかなり怒っていた。
声のトーンが普段より1オクターブほど高かった。
普段、結界など意識していない青山だが
こんなに早い反応は初めてだったので、きちんと働いているんだとある意味感心していた。
高い契約料を払っているだけの事はある。
「あぁ いつもすみません。
今回は上村先生からの紹介で、どうしても断れない案件だったもので…」
それは嘘ではなかった。
ただ今回の依頼主、奥村氏は政治家の秘書で政界にも顔が広かった。
恩を売って置いても損はないという打算もあったのは事実だ。
「一体何を施設内に招き入れたんだい?」
「6歳の女の子です。
彼女の周りで不審火が相次いでいます。
ただ命に関わるようなものではありません。
今、原因を探る為に施設内に泊まってもらっています。
親御さんは政界の関係者なので、誰かが嫌がらせで呪詛をかけているんだと思ってましたが…」
「違う… あれは人間ではないよ。」
みよ婆の声はいつに無く固かった。
「コレは精霊だ… 凶々しい魔神
不審火は魔神からの警告だ、コイツは俺の女だから手を出すなっていう。
その子は魔神に見染められたんだよ。
ただその子はまだ幼い、魔神は待っているんだ。その子が成長し魂が成熟するのを…
魔神の花嫁というのは魔神への生け贄と
同義だからね。
いいかい、その子は成長したら特注の結界内に閉じ込めてしまわないといけない、特注の結界ならいかに魔神でも命を取る事は難しい。
逆に幼い間はその子の命は心配ない。
魔神が、彼女を守るからだ…
むしろ周りに及ぼす影響の方が問題だ。
今はその子に危害を加えようとしたり、親族以外の男を近づけるな。
魔神を刺激したくない、わかったかい?
そして早く結界の外にその子を出してくれ、このままだと結界が持たない。」
みよ婆はそういうと電話を一方的に切った。
結界の修復に手間取っているのだろう…
「やれやれ…
ちょっと面倒な事になったな。
巫女が1人増える事になりそうだ。」
心の声が漏れてしまっていた。
侍女に女の子を教団施設からホテルに移動させる手はずを整えるように頼むと、奥村氏に連絡して事情を説明する。
精霊ねぇ…
鬼は見えるが精霊は見えない。
しかし、みよ婆がそこまで言うならそうなのだろう。
このままだと奥村リナは20歳を迎えずに死んでしまう。
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