A witch

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 天候不良による食糧不足と疫病で国は大いに荒れ、死の恐怖が人々を襲っていた時代。疑心暗鬼に揺れる世界を、アーヴァは少しだけ愉快に思っていた。  彼女は魔女であった。見た目こそ黒髪をした美しい娘であるが、既に五十年は生きている。生まれながらに長い時間が約束されている彼女にとって、退屈な日々をいかに過ごすかがさしあたっての問題だった。だからこそ人々が混乱の中必死に生きようとする様子に非日常を感じ、胸が躍っていた。  彼女の営む薬屋はどこよりも安く薬を売った。怯えたような怒っているような表情が薬一つでぱあっと晴れるのが面白いとか、ありがたがられるのが気持ちいいとか、理由は様々だったが、最低限必要なお金だけ稼げればいいという思いからだった。裕福な暮らしに飽きた彼女が見つけた、次の生き方だった。だから今ではすっかり魔法を使わなくなり、寿命が長いだけの人間として暮らしていた。
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