A witch

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 喉が裂けて血を吐きそうなほど走り、大樹の幹に手をつく。アーヴァの瞳からは涙がとめどなく溢れる。  罰が下ったんだと思った。魔女の私が、人間と深く交わってしまったから。私はアーヴァ。渡り鳥のように生きると決めたはずなのに。彼と過ごすうちに、この幸せが続くのだと思いこんでしまった。  後悔と悲しみが息と共に漏れ出る。それを無理やり抑え、アーヴァは二十年ぶりに魔法を使った。アクスルに最後の言葉を伝えるために。指を宙に向けて動かす。すると金色の光を放つ文字が浮かびあがる。 『私が魔女であると噂がたっています。きっとこれから、どこへ行っても同じことが起こるでしょう。私は事故で死んだことにでもしてください。どうかあなたは、穏やかな日々を過ごしてください。私に心をくれてありがとう』  最後のピリオドを打つと金色の文字は風に溶けて、彼がいるであろう小麦畑の方へ流れていった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加