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好きキライ
「あんなあ、うち、本当は神様きらいなん。」
日曜礼拝の帰りに寄った親友の家で、みーちゃんは親友のかーくんに打ち明けた。
「え、それ、お母さんたちには言わないほうがいいよ。」
かーくんはおせんべいをかじりながら言った。
みーちゃんもおせんべいをかじりながら頷いた。
「わかってる。
ケンカになるもんね。」
「うん。
でも、大変だね。
ずっときらいだったの?」
「最初はよく知らない相手だったから、好きもきらいもなかったけど。
いちばんイヤなのは、ご飯の前のお祈りやねん。
お腹空いてるのに、ちょっとでもフライングすると、神様に失礼やて、やり直しさせられんねん。」
「ああ、わかる。
イライラしてくるよね。」
「そうなんよ。
なのに、そんなイライラしたらあかんって、怒られる。イライラさせてんのは誰やねんって話や。そもそも誰やねんって。」
「神様、うざいな。」
かーくんが笑った。
みーちゃんはわかってもらえたのが嬉しくて笑った。やっぱり親友やと思った。
かーくんは言った。
「でも、教会には来なよ。
みんなに会えるじゃん?」
「それやねんな……。
本音言うとな、確かにみんなに会えるから、教会行くんや。うち、転入生やから、居場所はなるべくたくさんほしいし。
けど、なんか、神様をダシにつこうてるみたいで、後ろめたいねん。」
「きらいな奴のことなんか、気にしなくていいんじゃない?」
「それや。きらってる上にダシに使うって、うち、サイアク女子みたくない?」
「ははは、それは………言わなきゃ誰も気づかないのに。」
「気づかれなきゃいいってもんとちゃうやん。」
ため息をついたみーちゃんを見て、かーくんは言った。
「……きっと神様のほうは、みーちゃんのこと、好きだと思うよ。」
「ええー! それ恐怖や! 聖書のなかで神様のお気に入りの人って、みんなひどい目にあってるやん! いやや、大恐怖や!」
「それは、神様と両思いの人たちだよ。
みーちゃんは神様きらいなんでしょ?」
「きらいや! 永遠にきらいや!
今日さらにきらいになったわ!
固い意思を持ってきらうわ!
自分がかわいいからな!」
かーくんはただ笑って、みーちゃんにおせんべいをすすめて、自分も食べた。
みーちゃんがずっと一緒に教会に通ってくれたらいいなと思いながら。
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