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ゆっくりと目を開ける。...耳鳴りがする。あたりを見渡してみるとそこは見知らぬ場所。周りには両親や兄弟。...夢か。いわゆる明晰夢と言うものなのだろうか、夢なのにも関わらず意識がある。
家族の方を見ると、みんな揃って何かを言っているようだった。耳鳴りのせいで聞こえないが、険しい表情、呆れたような表情、憐れむような表情からどんな事を言われているのかなど安易に想像できる。が、今更気にするようなことでもなくて、目を逸らし右から左へと垂れ流す。
いくらかそうしているうちに耳鳴りが大きくなり、思わず目を瞑ると同時に場面がかわる。
今度は学校。しかし、今通っている学校ではなく見知らぬ学校だった。そして周りにいるのは友達や親友、先生や恋人...など。それらもまた同様に何かを言い始める。
相変わらず耳鳴りで聞こえないが、表情は険しい表情や呆れたような表情。
右から左へと垂れ流すことは出来なかった。
恋人が口を開いた瞬間、咄嗟に目を閉じた。見たくない、聞きたくないと言う一心で。君の声でそんな言葉を聞きたくなかった。
また耳鳴りが大きくなっていく。夢から引き戻されるような感覚がした。夢から覚めたのだと思い、目を開けようとする...が、目が開く気配も、耳鳴りが止む気配もなければ、体が動く気配すらなかった。耳鳴りが大きくなっていき、呼吸すらまともに行えず息苦しい中漠然な恐怖だけが積み上がっていく。早く止んで欲しい、解放されたい。しかしそんな期待とは裏腹に、耳鳴りが止む気配はない、そしてやがて、意識が落ちた。
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