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もしかしたら間に合うかもしれない。
そう思っていた時に俺の目には木に引っかかって動けない一羽の雀が映る。
助けている暇は無いと思っていたのに俺の足は止まっていた。
本当に無意識に起こった行動だと思う。
あの時もし雀を助けていなかったら電車に間に合っていたかもしれない。
俺は今更そんなことを考えても意味が無いとビールを一気飲みした。
これまでずっと社長に言われてきた悪口が頭の中から消えてはくれない。
今日もう帰って寝ようと思って会計を済ませて店を出た。
十一月の夜はとても寒く、肩を寄せ合っているカップルとよくすれ違う。
この先にある角を右に曲がれば自宅に着くというところで、三角座りをして泣く一人の少女がいた。
私はこんな夜更けに女の子一人では危ないと思い声をかける。
「どうしたんだい君? 今日は寒いしもう時間も遅いから早く家に帰った方がいい」
少女は俺の顔を見上げて涙をふいた。
「私帰る場所がないの」
その言葉は俺にとってとても衝撃的な一言だった。
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