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晴れ間
薄々気づいていたが、俺が話しかけなければ楓と関わることはほとんどない。二人の間には見事に距離ができた。
楓は一応ちゃんと登校するようになったが、誰とも関わらず、ただ退屈そうに毎日窓の外を眺めているだけだ。一度も目が合わないことが俺の心を臆病へと傾けていた。
なんて不毛なんだろう。告白して、イエスと返事をもらっておきながら破恋するなんて。
行き場のない思いは四面を壁に覆われ、同じ所をぐるぐる回るばかりだ。
「智久ぁ。俺、どうすればいいと思う?」
「ご愁傷様です」
「てめ…」
サクッととどめを刺したのは、同い年の従兄弟である小川智久。
垢抜けない俺とは違い、どれだけ角田に注意されても金髪をやめないパンチのあるイケメンだ。
何でも話せる俺の唯一の理解者であるが、常に女子から黄色い声援を浴びる彼の実態はクリームパンと苺チョコを同時に頬張りながらフルーツジュースを嗜む変態野郎である。見てるだけで胸に悪い。
「秋山楓ねぇ…。前から思ってたけど、アレの何がいいの?ちょっと顔が可愛いだけじゃん」
「顔は関係ないってば」
「だって歩くだけで男女問わず引っ掛けるアバズレくんなんだろ?やめとけやめとけ。あんな奴ぁ高田先輩くらいがお似合いだって」
「え、ちょっと待って。なんで智久、楓と高田先輩のことも知ってんの?」
「何でって、その辺で聞いたから」
剣道部に在籍しながらバンド活動にも精を出す智久はとにかく顔が広い。
俺では耳にすることのない噂でも(時には◯先生と△先生が不倫しているというとんでも情報まで)知らぬ間に把握していることが多かった。
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