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プロローグ
詳細は省く。
死んだと思ったら異世界だった。
異世界っていうかなんていうか、なんだこれ?
俺は、草原に仰向けに横たわって、頭上に伸びる、何か巨大な筒状のものを見ていたのだ。
直径がサッカーコートほどの円筒が、頭上に立って、いや、浮かんでいるのだ。
地表との距離は十メートルぐらいだろうか。高さは何処まであるのか全然わからない。
何km、っていうオーダーだと思った。
その全貌が見えるようになるのはずっと後のことだが、それはまさしく、空と大地の間をつなぐ塔だったのだ。
正確には空と言うか、空の向こうにあるもの、なのだが。
とにかく気が付いたら俺はその、ほのかに光る巨大構造物を見上げていた。
さっき書いた通り、地面は草原だった。ステップ地帯というのだろうか。乾燥した地面に短い草が生えてる土地だった。
そして仰向けに横たわっている俺は、背中が痛かった。
背中に剣を背負った状態で気を失っていたのだ。
なんか金属と革でできた鎧みたいなものを着ていたが、その硬さが余計に痛みを加速させていた。
とにかく、俺は立ち上がって自分の状態を確認した。
身体は健康なようだ。トラックに牽かれて内臓がぐちゃぐちゃ、なんてことはなかった(いや、トラックに牽かれた記憶もなかったが)。
それはいいのだが、鎧のデザインが最悪だった。昭和のRPGみたいだった。ぞろりとしたマントが付属していて、クソダサイ胸甲に皮の肩あてがついたやつ。
下半身には足の前後と横にそれぞれ金属板がぶら下がっていて、歩くたびに邪魔だしこれもまた痛い。
色は基本ブルーで、胸になんだかわからない紋章みたいなものがデカデカと描かれている。
恥ずかしい。
真っ赤なマントが肩から下がっているので、それでイタイ鎧は大半隠すことができるのだが、このマントもまた恥ずかしい。
立ち上がって、巨大浮遊円筒の下から出ると、少し離れたところに人の姿があった。
俺と同じような鎧にマントの少年やら少女やらが並んでいて、その先にテントがある。
テントの横の地面には杭が打ち込まれていて、そこに看板がとりつけられていた。
俺はその看板の文字を造作もなく読むことができたが、そんな自分に驚きもしなかった。
日本語だったからだ。
看板にはこう書いてあった。
「東京民主共和国 入国管理局 第二出張所
順番に並んで、番号札を受け取ってください」
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