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「……会いたいな」
久しぶりに懐かしい気分に浸っていた。東大卒ならエリート街道一直線だろうが、大手メーカーの本社に引き抜かれた自分だってなかなかのもんだと思っている。
いまなら胸を張って再会できるような気がした。
「でも、連絡先わかんねーや」
リンネは中学卒業後、いちども同窓会に顔を出したことがない。
実家に置いてきた卒業アルバムには、リンネの実家の住所が載っていたと思う。でも実家に連絡していまの連絡先まで調べてもらうのはさすがに面倒だった。
(中学の同級生なんてこんなもんだろうか。あの頃は毎日飽きるほど一緒にいたのに――)
何度か、一高の制服を着たリンネを帰宅途中に見かけたことがある。声をかけようとして、やめた。リンネは見るからに頭の良さそうな眼鏡集団に混じり、案外ふつうにお喋りをしていた。
リンネのそんな姿を見たら安心するとばかり思っていたのに、心の中ではムカついていた。
(高校に入っても遊んでほしいって言ってたくせに。命の恩人レベルで感謝してたくせにさ)
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