35歳

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 もしその気持ちを、もっと早くに知っていたらどうなっていただろう。  たとえば、中学生の頃に――いや、さすがにあの年齢だと受け止めきれなかった気がするけど。  大人になって、もし結婚する前に再会していたら、俺たちの関係は何か変わっただろうか。  わからない。男を好きになる自分を、いまもまだ想像できない。 「……これ以上、ひとりで人生を生きていくのが辛いんだ。太一の一部になってしまいたい。そう言えば太一、お腹空いてない? そろそろ僕を食べる気になってくれた?」 「だから、食うとこねぇって言ってんじゃん。それにチキンとケーキ買ってきたぞ」  そう言って笑い飛ばすと、リンネはしょんぼりした顔で笑う。 「……そりゃあチキンとケーキの方が僕より美味しいよね。重々承知していたけど」  その寂しげな笑顔が胸に痛い。  リンネが嫌なわけじゃない。恋人にはなれないけれど、他の友達よりずっと大事に思っている。  ただ、タイミングとか性別とか、いろいろ噛み合わなかっただけで。  それを、何とか伝えてやりたいと思う。 「……ごめんな、リンネ。俺さ、牧師の前で嫁に生涯の忠誠を誓ってしまったし、可愛いスーちゃんを悲しませるわけにもいかないからさ、申し訳ないけどお前の気持ちには応えてやれないよ。でもさ――」  むかし嫌と言うほど聞かされた、リンネの愚痴を思い出す。 『つまり輪廻というのはだね、死んで、生まれ変わって、また死んで、また生まれて、生と死の循環をぐるぐると永遠に繰り返すことを言うんだよ』
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