○○解禁

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 今日は待ちに待った○○解禁の日だ。俺はこの日の為に毎日仕事を頑張ってきたといっても過言ではない。  早く答え合わせがしたくて寄り道もせずに帰ってきた。玄関で靴を脱ぐ間も惜しくて、片手でスマホを操作しながらそのまま上がり框に座る。  あぁ、あまりの興奮に息が上がる。いや、アパートの三階まで一段飛ばしして帰ってきたから息が上がっているのだ。でも整える余裕なんてない。そんなことより○○だ!  俺はお気に入り登録しているサイトをタップして『今日の○○解禁は3つ!』というバナーを見つけて思わず「ふふふっ」と鼻から息が出た。  このサイトは、文字を○で隠して読者の想像を掻き立てるという悪趣味なサイトである。その文章はなぜかエロく、違うと分かっていてもやらしい文字を当てはめたくなる。  例えば。 *** 『彼女の○○○は世界一』  彼女は○○○が上手い。  初めて彼女の○○○を目にした時、あまりにも良すぎて頭のテッペンから足先まで得も言われぬほどの快感が俺を襲い、昇天しそうになった。いや、昇天した。  もちろんいままで彼女以外の○○○を幾度となく見てきたが、かつてこれほどまでに気持ちのいい○○○を体験したことはなかった。  しなやかな指使い、時折速くなるリズム、激しさと優しさが交互にくる強弱のつけ方。全てにおいてパーフェクトで息が上がる。  俺が彼女の○○○を堪能している間、彼女もまた恍惚とした表情で○○○を続ける。興奮した彼女の口が大きく開いて俺の反り立つ心の情動を咥えて離さない。  怖いくらいに気持ちが良かった。俺が俺ではなくなりそうで、そのまま意識を失うのも悪くない気がして、それでも最後まで彼女の○○○を感じていたくて、俺は何とか意識を保っていた。  フィナーレに向かって彼女の感情も昂る。これでもかというほど指を動かし、気持ちの良いポイントを確実に突いてくる。彼女の○○○から目を離せない。ああ、もうダメだ…… 「…………っ!」  最後の余韻までたっぷりと味わった俺は、息をひとつ吐き出したところで初めて呼吸をしていなかったことに気づいた。息をするのも忘れるくらい、彼女の○○○が最高だったのだ。  これで無冠なんて。かつての人たちは一体彼女のナニを見てきたんだろう。少なくとも俺にとっては人生で一番の○○○だった。  息を切らした彼女は、額から流れる汗を手で拭って俺を見た。 「先生、どうでしたか? 私の○○○は」  俺は拍動する全身を感じながら、手放しで拍手をしたい気持ちを何とか抑え、クールを装って答えた。 「ああ、最高だったよ。君の○○○」  恥ずかしそうに微笑む彼女を、心から大切にしたいと思った。
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