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「え、ちょっと待ってよ、一夏!
行くってどこへ?どこいくの?ねぇ、俺もついてく!」
ヤバい、頭がガンガンする。
目の前で起きてることがまだ理解できない。
真っ青になりながらも、慌てて追いかけて一夏の肩をつかむ。
…が。
「あのさぁ、錦…」
一夏がため息をついた。
聞いたことない声色。
自分と同じ声なのに、知らない低い声。
…心臓がはねた。
「悪いけど無理だって言ってんの。」
「い、一夏…ずっと一緒じゃ…」
涙がじわりと浮かぶ。
そんな表情を見ても俺と同じ顔をした人は顔色を変えない。
そして、こう言い放った。
「一緒?何言ってんだよ、俺とお前は別の人間じゃん。
ずっと一緒なわけないじゃん」
「…………い、…いち……か………………」
その言葉を聞いて、完全に頭が真っ白になった。
肩に乗せていた手を払われる。
そして、一夏と女性はそのまま歩き去っていった。
あれ、あれれ。
俺たちは一卵性双生児。
生まれたときからずっと一緒。
何かするのもずっと一緒。
この先もずっと一緒…………のはず、だよね?
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