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とぼとぼと暗い道を一人で歩く。
あれからしばらくその場から動けなくて。
鍵を掛けに外へ出たマスターに心配されて、ジュース一杯おごってくれた。
でも、ショック過ぎて何も話せなくて、結局何もわからないまま家に帰った。
家に着くと、妹の雫がふわふわのクッションを抱きながらソファでドラマを見ていた。
母親はもう寝ているようだ。
「ただいまー…」
靴を脱ぎながら何とか声を絞り出す。
「にし兄お帰りー」
雫がちらっとこっちを見てそう返事する。
そしてすぐにまたテレビへ視線を戻した。
当たり前かもしれないけど、妹と弟は一瞬で俺たちがどっちか見分けられる。
親でも迷うくらいなのに。
同じ血が流れてるからかな。
ちょっと不思議だと思う。
ため息をつきながら、カバンを机に置く。
(だめだめ。妹の前でこんな疲れた顔しちゃ)
パシパシと両頬を叩いて負の感情を追いやると、
「マイスウィートエンジェル雫ぅー!!
会いたかったー!!」
バッと雫に抱き着いた。
「ばっ!バカ兄!!離れろ!!」
雫はげっという表情を浮かべて、べしべしと俺の頭を叩く。
そんな姿もかわいい。
いつも通りの流れ。もはやルーティンみたいなものだ。
…雫はいつも嫌がるけど!
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