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「珠子……悪いがコンビニに寄ってくれないか?」
「どうしたのですか?」
「なんか緊張してな?一服したいんだよ……それと缶コーヒーも飲みたいし……」
「あら大丈夫ですか?……ゆっくりでいいですからね?」
「ありがとう……珠子」
珠子は道沿いにあるコンビニを探し見つけると、その駐車場へ車を停めた。
「1人で大丈夫ですか?」
「ああ……大丈夫だ」
そう言って和己はコンビニの中へと入って行った。
……大丈夫かしら、あの人。私も働こうかしら?
珠子がそんな風に物思いに耽っていた時だった。慌てた様子で何やら冊子を手にした和己がものの数分で助手席に飛び乗って来たのだ。
「あなた?どうしたのですか?」
「珠子!見ろよ!これ!!」
和己が手にしていたのは求人雑誌であった。和己はページを捲りある求人のページを珠子に見せ指を指している。
「これ!これがいい!」
珠子は和己が指を指している項目を注視した。
「タクシードライバー?……何故?」
「俺……実を言うと組織の中で働く事が苦痛なんだ。タクシードライバーなら気楽でいいと思って……」
「まぁ!!そうだったのですか?!」
珠子は驚きを隠せなかった。何故なら今のいままで会社を辞め自営業を始めたのは、自分を監視する為だとばかり思っていたからだ。
珠子は少し考え込んだ。
そして良い案が浮かんだ。
「あなた。タクシードライバーになったら私を自由にしてくれますか?あなたからの束縛や命令を解禁してくれますか?」
「か、解禁?」
「そう、解禁。どれだけ私は、あなたに苦しめられたか理解していますか?」
そう言われると和己は首を項垂れて、
「珠子……悪かった……解禁するよ。もっと珠子を大切にするよ……」
「花棜浬ちゃんと寿陽くんもですよ?あなたにどれだけ愛されたかたったか、ご存知ですか?」
「うっ……」
和己は更に首を項垂れると目からポタリポタリと涙を落としていった。
「漸く解ったようですね?これから、やり直しましょう、ね?あなた?」
「うん!」
和己は泣きながら珠子を抱きしめた。
そして……
「愛しているよ……珠子」
と言って珠子の頬に口付けをした。
珠子はヨシヨシと和己の背中を擦りながら和己の唇に自分の唇を重ねた。
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