カルボナーラの誘惑  ★BL表現あり

1/1
前へ
/10ページ
次へ

カルボナーラの誘惑  ★BL表現あり

 小さなテーブルに、(うらら)と並んで座った(さとる)は、カルボナーラをフォークに絡めながら、   「親戚の叔父さんに、不動産屋に知り合いがいてさ、支店を何件か回って、やっと見つけたんだよ」  家賃は安いが、敷金と礼金の折り合いを付けるのに、悟が難儀したことを話して聞かせると、麗は沁々(しみじみ)と項垂れ『敷金礼金かぁ』と唸った。   「大学入ったら一人暮らしするの?」  N大に通うこととなったとしても、不便は無いだろうと、悟が疑問を向けると、 「通学には良いんだけどさぁ──親が煩くて……」  悟のマンションから、丁度一キロほど離れた、県境の住宅街に麗の家はあった。小高い丘の中腹に拓けたその一帯は、謂わば富裕層の邸宅が集まる一帯だった。麗の父親は警察官僚で、その厳格さは、麗の愚痴として数え切れないほど聞かされていた悟だ。随分年の離れた年下の母親は、固陋(ころう)な父親のいいなりで、麗の家庭では、カラスも父親が『スズメだ』と言えばスズメなのだった。 「週に一回こうして外泊するのだってさ、やっと赦してくれたんだもん──男なんだから、『まちがい』なんて心配しなくて良いっての」  麗はカルボナーラソースで汚した口唇を、無造作に舌先で拭った。ひょっこり現れた赤い舌が、妙に艶冶(えんや)な動きで、可愛らしい口唇を滑り、ギク──リと身構えてしまった悟を、麗は誘惑(さそ)うような視線(まなざし)(みつ)め、もう一度ゆっくりと上唇を舐めて見せた。   「や……辞めようよ。そう言うの良くないよ」  耳まで赤く染めた悟を麗は笑い、『やめない』と更に悟へ迫り、   「辞めて欲しかったらキスしてよ」  瞼蓋を伏せて、口唇を突き出して見せた。  こうなると利かない麗を、良く知っている悟は、渋々口唇を重ねた。   「──ちがう……もっとちゃんとしたキスが良い」  軽く触れて、離れようと思っていた悟の首を、麗は絡め取り、悟に()し掛かると、強引に舌を絡める接吻(くちづ)けを強請(ねだ)った。 e35fe43e-be51-47ba-b484-8e39fd0f9e7a
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加