輝く世界で君が笑う。

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輝く世界で君が笑う。

「もう大丈夫だぞ、よく頑張ったな」  その日。  突然、暗い地下室に光が射しこんだ。僕は天井を開ける大人達を見て最初は身をすくませたのだった。僕達にとって、大人は怖い存在だ。自分達を支配するか、傷つけるしかしない存在。だからきっと彼等もそうだろうと思ったのである。大丈夫だぞ、なんて優しい言葉なんか信用できないと。  段々と“何か少し様子が違うな”と思ったのは。彼等が、いつも見る金持ちの傭兵と違って青色の軍服を着ているから。そして、僕達の手錠と足枷を壊してくれたから。さらに、地下室から出た先の廊下で、見慣れた茶色の軍服の傭兵たちが泡を吹いて倒れているところを見たからだった。 「……おじさん達、誰?金持ちのおじさんの仲間じゃないの」  僕はちらり、とまだ怯えたように地下室に残っている仲間達を見る。  僕と同じ、クオリテ族の子供達。年齢は三歳から二十歳までいるはずだったが、あの金持ち男の趣味で薬を投与された結果全員が十歳くらいの姿に“固定”されていた。中には妊娠して、大きくお腹を膨らませている子も数人いる。そんな子供達を、救出者とおぼしきおじさん達は憐れむような目で見た。そして。 「仲間じゃない。おじさん達は、この国の悪い王族と貴族をやっつけに来たんだ。……真っ先に出てきた君、この子達のリーダーかな?年と名前、言える?」 「……ミハエル。十五歳」 「そうか、ミハエル君。綺麗な水色の髪だね。……お友達に、出て来てくれるように言ってくれないか?特に、妊娠している子達はきちんとお医者様に見せた方が良いだろう?怪我をしている子達も」  医者。本当に、手当なんてしてくれるのだろうか。僕達が怪我をしても妊娠して子供が生まれそうになって苦しんでも、あの男は一切そういったものを手配してくれなかったのに。 ――とりあえず、信じるしかないのか。  僕は仲間を説得するため、階段を降りた。とにもかくにも、これ以上誰かが死ぬことだけは避けたい。仲間の中には文字も書けない、まともに言葉も話せない者も少なくないのだ。出来る事は、大人に言われるがまま体を売ることだけ。  誰が相手だろうと。強大な力に逆らう術なんて、僕達は誰一人持ち合わせてはいないのだった。
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