プロローグ

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「そういう意味じゃなくて、もう起きようって言ってるの。お腹すいてるでしょ? 宗介だって」 「来いって」  わたしがしぶしぶベッドに腰を下ろすと、宗介は片手を伸ばしてきて、下から上へと背筋をなぞる。  そうされるのが弱いと、わかった上で。 「郁美だって、本当はまだ足りないんだろ? 昨日の夜『もっと……』って、俺の腰に脚を絡ませて、あんなにねだってきたくせに」  そう言うと、パッと起き上がり、あっという間にわたしを組み敷いてしまう。    わたしの頭の両脇に手をつき、まっすぐ視線を落とす。  宗介の虹彩は日本人としては、かなり明るい色をしている。  彫りの深い端正すぎる顔と相まって、世間ではダブルかクォーターだと噂されているけれど、本人は生粋の日本人だと笑っている。  遠い過去まで遡ればわからないけれど、自分の知る限り、外国人の血は入っていないはずだと。
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