第3章 気持ち、溢れて

29/29
前へ
/183ページ
次へ
 はじめて身体を重ねたのに、今までの恋人とは到達できなかった高みに、宗介さんはいともあっさりと連れていってくれた。    どんなことをされても、嫌じゃなかった。  いや、それどころか……もっともっとして欲しかった。  彼はわたしの頬に触れ、輪郭に沿って優しく撫でる。  そして、薬指で唇に触れてそのままなぞる。  くすぐったくて、いやいやするように顔を振ると逆に顎を捉えられ、唇が重ねられた。  くすぶっていた身体の奥が、また熱を持つ。  唇を離して、至近距離のままで見つめる彼。 「もう、何があっても離さない。ずっと俺のそばにいて……郁美」    もう一度、深い口づけを交わす。  そして、滴る密のようにねっとりと甘い声で「また、欲しくなってきた」と言われ、わたしはその背に腕を回した……
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3409人が本棚に入れています
本棚に追加