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宗介さんは隣に座るわたしの肩を抱き寄せ、髪に軽くキスをした。
「やっぱり、いろいろ我慢させることになりそうだな」
わたしは宗介さんの肩に頭をもたせかけ、彼の骨張った大きな手を握った。
「今さら、引き返せない。もう、こんなに好きになってしまったのに」
宗介さんは横からわたしの顔をのぞき込み「えっ、何? もう一回、言ってくれる?」ととぼけたことを言う。
「だから、今さら……」
「じゃなくて、後のほう」
「えっ?」
「こんなに、以降」
以降って、台本の読み合わせじゃないんだから。
わたしはちょっと逆らいたくなって「一回きりです」と一言。
「ふーん」
すると彼は一度、わたしの身体を放し、こっちに向き直ると両手でわたしの頬を挟んできた。
切長で美しい琥珀色の眼が、愉快そうに細まった。
その、宗介さんの表情ひとつで、部屋の空気が、一瞬で濃密で甘く淫らなものに変化する。
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