第4章 極秘交際

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 まさか電話をもらえるなんて思っていなかったので、素直な言葉が口をついて飛びだした。  スマホの小さな画面を通してでも、彼が、わたしの今の言葉を喜んでくれているのが伝わってくる。  そして、ちょっと口をゆがめて笑い、言った。 「俺は頭から離れたことないけど、郁美のこと」  30歳目前の男女が何を言っているんだろう。  とても他人には聞かせられない。  バカップルもいいとこ。  でも、単純に嬉しい。  スピーカーを通して、ざわめきが聞こえてくる。 「今、どこ? 亮介さんと一緒?」 「ああ、亮介の友達の店で飲んでるところ。亮介はあっちで盛り上がってるよ」 「宗介さん」 「ん?」 「さっき別れたばっかりだけど、とっても会いたい」 「俺もだよ。声だけでも聞きたくてさ、電話したんだから。時間ができたらすぐ連絡するから」 「はい。待ってますね」
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