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第5章 隠れ家温泉宿での一夜
はじめて宗介さんと愛を交わした日から数カ月経った。
付き合いはじめたころは梅雨の終わりだったけれど、今はもう秋。
風が冷たくなってきて、そろそろセーターが恋しくなる季節になっていた。
手掛けていた北斗繊維の仕事がひと段落し、わたしは次の仕事までのエアポケットのような時間を過ごしていた。
あれから、宗介さんと会えたのは5回。
一度は例の飯倉スクエアの会員制クラブで亮介さんと3人で。
彼は「兄貴、好きならガンガン行けよって、最初から思ってましたよ」と言って、祝福してくれた。
ふたりきりで食事をしたのは3回。
彼の部屋で夜通し過ごせたのは一度きりだった。
でも実は……
明日、彼と温泉旅館に一泊することになった。
これから年末までの2カ月余り、宗介さんはまた、殺人的な超ハードスケジュールになるそうで、向井さんが休みを調整して、東京近郊の温泉に予約を入れてくれた。
「しっかり英気を養ってきて。その代わり、年明けまでの仕事はしっかりお願い」と。
なんて、粋な計らい。
やっぱりできる人だ、向井さん。
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