第5章 隠れ家温泉宿での一夜

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 明日は平日だけど、わたしはもちろん有給を申請した。  その許可を課長にもらっていたとき、知花が通りかかった。 「珍しいですねー、仕事の虫の郁美先輩が有給なんて」 「最近、忙しかったから。さすがのわたしも骨休め。ごめんね、迷惑かけるけど」 「有給は働く者の権利ですから、謝る必要はないです。お土産は期待してますけど」 「うん、もちろん買ってくるつもり」  よかった。誰と行くんですかって聞かれたらどうしようかと思っていた。  親と行くという言い訳は用意していたけれど、わたしがつく嘘は知花にはすぐばれる。  「彼氏できたんじゃないですか?」としつこく食い下がられなくてよかった。    夜、宗介さんから、LINE電話がかかってきた。 「いよいよ、明日、会えるな」 「うん、待ちきれない」  宗介さんがわたしに連絡をくれるときは電話が多い。
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