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ネタバレ。
「……まあそんな感じで、最初はまったり雑談してただけだったんだけど」
里穂は大袈裟に声を潜めて続けた。電気を消した教室、スマホのライトでわざとらしく下から顔を照らすのも忘れない。
「突然、掲示板のあるメンバーがおかしくなったのね。流れからして、ある人が書き込んだアドレスをクリックしたものと思われるんだけど」
「おかしくなったって、具体的には?」
「突然パニクったのよー。何でこんなもの見せるんだ、とか。死にたくない、とか。来る来る来る来るやばいものが来る!とか。そんな脈絡ない書き込みが大量に溢れたの。見ていたAさんはびっくりしちゃったんだって。そのアドレスに実際に飛んで確かめたら答えはわかるかもしれない。でも、自分で見に行く勇気はなくて」
「う、うん……」
「暫くしたらパニクってた人達はごっそりいなくなって、掲示板には静寂が戻ってきた。……そう、みんな、パニクってた人がみーんな書き込まなくなっちゃったの」
私と、里穂と、友達二人。四人で放課後にこっそり怪談っぽいことをしよう、と集まることは珍しくはない。特に今は冬場。日が落ちるのが早くて、雰囲気も出やすいのだ。全員帰宅部で、かつまだ高校一年生。時間に自由がきくからこそのイベントだとも言う。
既に何度か企画しているが、毎回里穂の話が一番怖いのだった。一体このへんの話はどこから仕入れてくるのだろう、といつも思う。ひょっとしたら彼女の創作、なんてこともあるのかもしれないが。
「その掲示板は、IDが表示されるようになってたの。IDって二十四時になると切り替わるんだけど、それまでは基本的には共通なのね。携帯で書き込んだりすると、IDが変わったり変わらなかったりなんて現象も起きるみたいだけど」
今、彼女が話しているのは“知ってはいけない言葉”という怪談だった。何でも、耳にするたけで死ぬ、目にするだけで死ぬ、そんな恐ろしい言葉がこの世にはあると言うのだ。
私と友人達は今まさに、固唾を飲んで聞き入っている最中なのだった。
「とにかくね、パニクってた人達のIDが、突然ごっそり出てこなくなった。みんなまとめて書き込まなくなっちゃった、のは見ていたAさんにもすぐわかったってわけ。果たして彼らは何を見たんだろう。まさか神隠しにでも遭ったのか、それとももっと恐ろしい何かを見たのか……Aさんは怖くなって、結局すぐ掲示板を閉じてしまった」
「クリックしなかったのかあ」
「まあ、普通は見に行かないって。オカルトも怖いけど。個人的にはウイルスも怖いし」
「あー、そっちの恐怖もあるか」
「うん、それでね?」
ぐい、と里穂が顔を近づけてくる。
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