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「顔だけで騒がれるの嫌なんですか? 贅沢だなあ。俺、パパさんの顔好きですよ」
成海はのんびりした口調で言う。
そんなに率直に「好き」という言葉を向けられる成海が、羨ましく思えた。
大人になると、立場上うかつに人前で好悪を口に出来ない。けれど、ふと思いついた言葉を告げてみたい気持ちになった。
「僕は成海師匠の顔の方が好きだな」
そう言うと成海がさっと顔を赤くした。
「……その顔でそれはずるい。無自覚タラシ怖い……」
ぽそりと顔を背けて呟いた。
……聞こえてるんだが。どういう意味だ。
浩太郎は柄にもないことを口走った自覚はあったので、話題を変えることにした。
「ところで、成海師匠。最近、健康管理には気をつかってるか?」
成海はきょとんとした顔をする。
「え? なんすか? 少なくともメタボとは無縁ですよ」
そりゃまあそれだけ細ければそうだろう。
浩太郎は溜息をつきたくなった。
「それに、パパさんに言われた通り食事は三食きっかり食べてますよ」
「夜は眠れてるのか?」
「……痛いところを突いてきますね。作家のカンですか?」
「いや……そんな大げさなものじゃないが」
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