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あまり突っ込むと、立ち聞きしてしまったことまで話さなくてはならなくなる。
だからそれ以上言葉を続けなかった。
強い日差しが容赦なく頭上から降り注ぎ、並んで歩く二人の影が切り絵のようにくっきりと地面に写っている。
しばらくとぎれた会話を繋げたのは成海の方だった。
「パパさん、さっきの女の子たち、きっと今度会ったら合コンに誘って来ますよ」
「……子供を放って飲みに行けるか」
「何なら、俺、留守番しててもいいですよ。パパさんも気晴らしが必要でしょ?」
あんな二股だか三股だか分からないのを相手にする方がよほどストレスが溜まる。
浩太郎は内心そう呟いてから、思い出したように告げた。
「……気晴らしなら遊園地計画があるだろう? 今日、蒼太に話すからな」
「おお。いよいよ決行っすね。了解です」
成海はちょこんと敬礼して見せた。
彼は知らないのだろうか。同居相手が彼のことを疎んじたのは、あの女の子の入れ知恵だったのだと。
それとも気づいていて、ああして笑って接しているんだろうか。
……笑っていそうな気がする。
「……師匠」
「はい?」
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