二度目の幸せ

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 成海の部屋にはシングルベッドとライティングデスクが備え付けてあった。元々、客間に使っている部屋だった。荷ほどきしていない段ボールが積み上げられている様子に、彼がまだ遠慮していることが窺える。  新たな家財を持ち込まず空いた段ボールで本棚を作ったりしているのも、長居するつもりはないと彼が思っているように見える。 「……わざわざすみません」  成海は笑って浩太郎を迎え入れてくれた。パジャマの下だけを身につけて上半身は裸というくつろぎっぷりだ。  細くて色白だが無駄なく均整の取れたしなやかな体つきに、少し意外だと思った。  思っていたよりもひ弱ではないらしい。 「これから仕事ですか?」 「いや、今夜は少し原稿をチェックしたら寝るつもりだ」  明日蒼太と思いっきり遊ぶためにも、体力を温存しなくてはと思っていた。 「天気が予報通りならいいんだがな」 「大丈夫ですよ」  成海は力強く即答する。 「何しろ降水確率0パーセントですよ。逆さにしたって何にも降らないですよ」 「……君が言うとつい納得してしまうな」  ……天気の話なんてしている場合か。本当は聞きたいことは他にあるのに。
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