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笑おうとしているのだがぎこちなく見えた。
「……具体的に何のことですか?」
浩太郎が何に気づいているのか探ろうとしている。まだ誤魔化せるかと思って?
この期に及んで隠し通そうとしているのが分かると、浩太郎は苛立ちがこみ上げてきた。けれど、声を荒げる訳にも行かない。
「犯罪か何かに手を染めているんじゃないんだろうな?」
浩太郎が低い声で告げると、成海はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「……成海くん?」
声を掛けると、成海は動作不良のロボットのように、首を傾げた。
「……犯罪……?」
そう呟くと、いきなり背を向けてベッドに飛び込んだ。小刻みに背中を震わせて口を両手で塞いでいる。
何をしているのかはすぐに分かった。大笑いしたいのを懸命に堪えているのだ。
大声で笑えば隣の部屋で眠っている蒼太を起こしてしまうから。
けれど、堪えている分足をじたばたさせたりと忙しい。傍から見たら陸でおぼれかけているような。
けれど、真剣に心配していた浩太郎にとっては理解不能な反応だった。
「……何が可笑しい?」
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