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「ミモリコウ……ミモリコウタロウ……? これ書いたの、パパさんですか?」
成海が勢いよく顔を上げる。
形として二人は至近距離で向き合う形になって、浩太郎は驚いて後ずさろうとした。
そのとたんに、飛びつくように成海が抱きついてきた。勢いで、二人もつれるように床に重なるように転んでしまう。
「……成海くん?」
「よかったあ。俺、自分がとんでもなく浮気者みたいで……」
浩太郎はいきなり成海に抱きすくめられた状況に頭が混乱した。あまりのことに、心臓までせわしなく早鐘を打っている。
……浮気って。何のことだ?
「……安心しました」
相手は上半身裸だし、おまけに頬刷りしかねないほど顔が近い。
どうすればいいのか分からなくて、浩太郎はそっと成海の腕に手をかけた。
「……成海……くん? 苦しいんだけど」
成海は自分のやっていることにやっと気づいたのか、慌てて浩太郎から身を離した。
「わ……すみません。俺……」
浩太郎は触れた肌が離れた瞬間、急に頭の中に答えが降りてきた気がした。
彼と離れたくない、と思ってしまったのだ。
……この温もりが欲しいのだ、と。
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