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「いいんですか? そんな甘いこと言ってたら増長しますよ? 浩太郎さん」
浩太郎は、覗き込むように近づいてきた成海の顔をまっすぐに見返した。
「僕は誰にでも甘い訳じゃない。どちらかといえば臆病な人間だ。……今だって、なけなしの度胸を使い果たしそうなんだ」
成海を甘やかしていたつもりはない。自分こそ成海に甘やかされてきた。
浩太郎の言葉に成海はふっと目を細めて笑った。両腕を伸ばして、浩太郎の身体を引き寄せる。
「ほんっとに、謙遜大王なんだから。その気になればどんな相手でも夢中になるってほどいい男なのに……」
「……僕は君がいいよ」
どんな相手でもいいわけじゃない。
そう思いながら告げると、成海は明らかに分かるほど頬を鮮やかに染めた。
「ヤバイっすよ……。反則だ」
「え?」
吐息が降りかかるような間近に成海が顔を寄せてきた。相手に絡め取られるように強く抱きしめられる。
こうした状況は初めてだったので、浩太郎は無意識に身を硬くした。
「ええと……成海……くん?」
「キスしていいですか?」
答え代わりに目を閉じると、啄むような口づけが触れた。
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