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迫るという割には控えめなそれは、気遣い屋な成海にふさわしい気がした。
ぎこちなくおずおずと触れ合った唇。
それだけのことなのに、そのぬくもりが浩太郎にくれたのは……。
「……どうかしたんですか?」
浩太郎の表情に困惑した様子で成海は問いかけてきた。
自分は今どんな顔をしているんだろう。
「……何だか、情緒がおかしい。頭の中で打ち上げ花火が連打しているような気がするよ」
「俺なんて、派手にファンファーレが鳴ってますよ。脳内がフルカラーでカーニバル状態」
互いに顔を見合わせて、つい、吹き出してしまう。
舞い上がっている事には違いない。
「好きです……浩太郎さん」
「……僕もだ……」
今度はどちらからともなく、顔を寄せて唇を重ねる。ゆっくりと、確かめるように少しずつ深く。
ずっと封じ込めていた感情が鍵を壊してあふれ出てくるような気がした。誰かを愛おしいと思う気持ち、それをどうして抑えることができると思ったのだろう。
口づけのあとで、ぽつりと成海が呟いた。
「……蒼太くんには内緒ですよね」
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