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「……そうしてほしい。それに、悪いが蒼太が独り立ちするまでは、君よりも蒼太のことを優先してしまうかもしれない」
浩太郎がそう言うと、成海は目を丸くした。
「そんなの当たり前じゃないですか。親なんだから」
「自分を最優先して欲しいとか、思うものじゃないのか?」
成海が誰より自分を優先しろ、と言うタイプではないのは分かっていた。でも、それが分かっていても、甘える訳には行かない。
「俺は構いません。俺は『蒼太くんのパパさん』の浩太郎さんが好きなんですから」
成海はそう言って浩太郎をもう一度抱きしめる。
ほら、君はそんな風に甘やかしてくれるだろう。
内心でそう呟きながら、浩太郎は相手の背中に両手を回した。
浩太郎と成海がセッティングした遊園地日帰りツアー、参加三名。
蒼太は大喜びで、朝から落ち着かない様子だった。
「三人でお出かけなんて、初めてだね」
というより、知り合ってから一月も経っていない。
けれど、そう考えてみるとこれほど知り合って間がないのに、気心が知れている気分になれる相手というのも今までの人生でも数少ない。
その上、恋に落ちるとなると、初めてかもしれない。
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