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そんな事を考えながらマグロの赤身に醤油をつけていると、隣に座る家田加奈子がナイスタイミングで声をかけてくれた。
「藤代さん。この子、星占いに詳しいんですよ!ねえねえ、私と藤代さんの相性を占ってよ。」
私の肩に手を置きそう言うと、加奈子は強引に藤代さんを会話の輪に入れようとした。
仲間内でもイケメン好きで有名な加奈子だから、きっと藤代さんを狙っているのだろう。
「ええと、加奈子はしし座だよね。藤代さんは何座ですか?」
私は藤代さんの機嫌を損ねないように、努めてにこやかに声を掛けた。
そんな私の気遣いを無視するように、藤代さんは大きなため息をついたあと、仕方なさそうに私の問いに答えた。
「いて座。ちなみに血液型はB型・・・これでいい?」
そう投げやりに言ったあと、焼き鳥を口の中へ入れ、串を引き抜いた。
・・・なんて感じの悪い男なのかしら。
「はい。わかりました。」
私は無理やり唇を引き上げ、言葉を続けた。
「しし座といて座はともに火の星座同士だから、相性は抜群です。火の星座は明るく、情熱的で行動的。だからきっと気が合うでしょう。ちなみに加奈子はO型だよね。B型男子とO型女子の相性もいいんです。楽天的でマイペース気質、そして束縛を嫌うところが一緒なんです。よかったわね。加奈子。」
「へえ。そうなんだ!じゃ、藤代さん、私と仲良くしましょ。」
そう加奈子が首を傾げると、藤代さんが眉をひそめてこう言い放った。
「ふん。くだらない。」
「え?」
私が目を丸くしていると、藤代さんはビールをグイッと一口飲んだあと、こう続けた。
「星占いなんて俺は一切信じない。人間には目や耳や口という感覚器官がある。それらと脳や心をフルに使ってこそ、相手との相性が分かるってものなんじゃないの?名前も知らないどこかの誰かが作った星の相性なんてものより、俺は自分の直感を信じたいね。」
「・・・・・・。」
私と加奈子は無言で顔を見合わせた。
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