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しんっと沈黙が流れる。
「・・・分かった」
沈黙を破ったのは、翼の柔らかな声だった。
その優しい響きに、思わず下げていた顔をあげる。
と、翼は栞の想像していたような怒りの表情でも、呆れた様子でもなく…
「気にしないでよ、しおりさん。 謝らないで?」
「…で、でも…」
「しおりさんにも事情はあるし、僕も軽率だった」
「つばさ君…」
にこっとお姫様の様に可愛らしい笑顔を見せる翼に少し安堵しながらも、やはり心境は複雑だ。
こうは言ってくれているが、実際翼は同居の話が破綻するとどうなってしまうのか…
「僕のことは気にしないでね?どうにでもなる」
さてと、とソファから立ち上がり、翼が丁寧にひとつお辞儀をして見せた。
「 コーヒー、ごちそうさまでした。」
にこっと再び可愛らしい笑顔をくれる翼に、胸が苦しくなる。
迷惑をかけた。
ひどい裏切りだ。
口八丁で信頼させておいて、お酒の勢いでした…
なんて、本当に最低だ。
情けない…
軽薄で…
ーー私…かっこ悪いなぁ… …
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