菓子とイタズラと。

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ハロウィン。 アイルランドに住んでいた人達が作った行事だと、英語の先生が言っていた。 なんでも、死者達が家族の元へ行くらしい。 家に戻った時、何も無かったら機嫌を損ねるらしい。 「trick or treatー!」 元気に英語を言うこいつは、死んだはずの弟だ。 無駄に英語の発音がいいのはムカつく。 毎年10月31日になると何故か帰ってくるこいつ。 「俺、お菓子大好きじゃん?だから、まさに俺!って感じのイベントを天国で見てるわけないじゃん!」と本人は言っている。 「はい、お前の好きな菓子。」 「わー!ありがとう!さすがお兄ちゃんだよ!母さんたちは何故か俺の事見えてないし、お兄ちゃんだけなんだよ〜!」 嬉しそうにお菓子に手を伸ばした弟だが、俺がタダであげる訳もなく。 去年までは大人しくあげていたが、今年は何かしらしかけてみようと思った。 「お兄ちゃんなんでっ?!」 「これ渡さなけりゃイタズラだろ?イタズラ、何すんだよ」 怪訝そうに見る弟に、勝ち誇った表情で告げた。 ポカンとしていたが、その表情は直ぐにムッとしたものに変わった。 「……イタズラ、しちゃうからね」 「はぁ?なにす、んっ?!ふ、んぅぅ、や、め…ぅう…」 「…どう、イタズラ」 弟にキスをされるなんて思っていなかったため、驚きで空いた口が閉まらなかった。 「よだれ、たれてる。お兄ちゃんかーわい」 「は、はぁ?!?!?!」 人生初のキスが、弟と。 それも死んだはずの弟と、というのはどういう現状だ。 「俺、お兄ちゃんのこと好きだったんだからね!今も好きだけど。だから、来年から躊躇なくキスするから。あ、このお菓子もらってくねー!」 「ちょっ…」 勝手なことを言い、パッと消えていった弟。 俺はただ、口の端から俺のかあいつのかも分からない唾液を垂らして唖然としていた。
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