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《森川宏美の策略》
森川宏美は、源田店長がパンをこねている隙を見て、カレシにメッセージを送った。
《好き》
この文言に含まれているものはカレシへの好意ではない。最初から好意など持っていなかった。あと一ヶ月経ったら別れを切り出すつもりだが、金銭的なつながりはまだ断ち切れない。目標とする金額が貯まるまではガマンガマン。話を持ち掛けたのは自分。カレシとは共犯関係にある。やたらとしつこいセックスも、協力手当だと思ってガマンガマン。
このパン屋のことは昔から知っていた。最初は汚いやり方だと鼻で笑っていたけれど、確かに味は良いし、秘薬でも入っているんじゃないかと思うぐらい癖になる。だから商売になると思った。そしてネットで希望に沿う男を探し、身体を使って口説き落とした。
今のカレシは、軽食類の移動販売を生業としており、主軸はメロンパンだった。その彼に「カレーパンも売ってほしい」と持ち掛けた。折しも売上に伸び悩んでいた彼は、半年限定という条件をつけ、これを承諾した。
宏美は翌日、源田のパン屋に行き、アルバイトとして採用された。面接時から淫らな眼で見られているのは分かっていた。だからこちらも好意があるように振る舞い、普段は猫背気味な姿勢も正し、あえて胸を強調して見せた。源田は宏美と話す際、顔と胸を交互に見ながら卑猥に笑う。内心では誰が相手にするものかと思いつつも、さりげなく純情ぶって、日々源田の心をくすぐっている。
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